影響力の武器 第三版

影響力の武器 第三版

【一言レビュー】
ビジネス書としても人気のあるベストセラー本。社会で見られる心理学や、日常生活で見られる心理テクニックが紹介されています。ページ数は多めですが、本の内容自体は難しくないので、初心者でも問題なく読めると思いました。

『影響力の武器 第三版』の内容・要約

まず『影響力の武器 第三版』の目次は、以下のようになっています。

第1章影響力の武器
第2章返報性―昔からある「ギブ・アンド・テイク」だが
第3章コミットメントと一貫性―心に住む小鬼
第4章社会的証明―真実は私たちに
第5章好意―優しそうな顔をした泥棒
第6章権威―導かれる服従
第7章希少性―わずかなものについての法則
第8章手っとり早い影響力―自動化された時代の原始的な承諾

『影響力の武器 第三版』は、社会で見られる心理学や心理テクニックを解説しているのが特徴です。

ここでは『影響力の武器 第三版』で紹介されている、心理学用語を簡単にまとめてみました。事前にチェックしておくと、本を読んだときに理解が深まるので参考にしてみてください。

固定的動作パターン

ある刺激に対して、常に同じ行動をとってしまうことを「固定的動作パターン」といいます。これは生得的なもので、種によってそのパターンも決まっているのが特徴です。

たとえばオスのトゲウオは、繁殖期に腹部が赤くなり、ほかのオスが縄張りに侵入すると攻撃をします。これは下半分を赤色で塗った模型であっても、同じように攻撃する様子が見られます。

『影響力の武器 第三版』では固定的動作パターンのことを、録音テープが再生されることに例えて、「カチッ・サー」反応と呼んでいます。

コントラストの原理

一番目に提示されるものと、二番目に提示されるものに差がある場合、実際以上に異なって見えてしまう傾向があります。これを「コントラストの原理」といいます。

たとえば10万円のPCをそのまま見せるよりも、30万円の最新型PCを紹介したあとに見せる方が安く感じるでしょう。提示する順番を間違えると、逆効果になってしまうので注意が必要です。

返報性の法則

人間は相手に何かしてもらうと、借りができたような気分になり、お返しをしなければならないと考える傾向があります。これを「返報性の原理」といいます。

また返報性の原理を応用したのが「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」です。最初に過大な要求を提示したあとに、本命の要求を提示する方法で、交渉術としても知られています。

『影響力の武器 第三版』では、この返報性のルールについて具体的に解説しています。

一貫性の法則

人間は一度決めたことを正当化するために、一貫した行動を取ろうとする傾向があります。これが「一貫性の原理」です。

また『影響力の武器 第三版』では、一貫性の原理を応用した「ローボール・テクニック」を紹介しています。これは最初にメリットだけを説明して、契約後にデメリットを提示するという方法です。

ほかにも有名なものとして、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」があります。『影響力の武器 第三版』では、安全運転のシールを例に説明されていたのでチェックしておくと良いでしょう。

傍観者効果

「傍観者効果」とは、周りに自分以外の人がいると援助が必要な場面でも率先して行動しなくなるというものです。傍観者が多いほど当事者意識を失い、その効果は大きくなります。

この代表的な例が「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。深夜に女性が襲われて、近所の住民38人が悲鳴を聞いていたにも関わらず、誰一人として警察に連絡しませんでした。

『影響力の武器 第三版』でも、キティ・ジェノヴィーズ事件について詳しく解説されています。

ウェルテル効果

「ウェルテル効果」とは、小説の『若きウェルテルの悩み』がもとになっています。自殺した主人公ウェルテルをまねて、ヨーロッパ中で自殺者が相次いだ現象のことです。

『影響力の武器 第三版』では、このウェルテル効果に触れつつ、社会学者のデイヴィッド・フィリップの研究結果を紹介しています。

ハロー効果

ある対象を評価するとき、特定の情報(特徴)によって見方や印象が変わることを「ハロー効果」といいます。後光効果と呼ばれることもあります。

たとえばメガネをかけている人や、白衣を着ている人に対して、頭が良さそうなイメージを持つでしょう。また外見が魅力的な人は、あらゆる場面で良く評価される傾向にあります。

ミルグラム実験

ミルグラム実験とは、「良心に反するような指示でも権威者に従うのか」を調査した実験です。アイヒマン実験とも呼ばれています。

これは別室にいる人に対して、被験者が電気ショックを与えるという内容でした。そして、致死レベルの高電圧を与えるような内容でも、ほとんどの被験者がその指示に従いました。

この結果から、権威性が強い影響力を持っていることを、ミルグラムは説明しています。しかし、実験に対する批判もあるので注意が必要です。

希少性の原理

なかなか手に入らないものに価値を感じてしまうことを、「希少性の原理」といいます。時間や数量を限定するのが一般的です。

たとえば「期間限定」という言葉や、「一日何食だけ」という言葉も、希少性の原理に当てはまります。このとき、対象自体の価値は関係ありません。

心理的リアクタンス

「心理的リアクタンス」とは、自分の自由が制限されたり脅かされたりすると、その状況に反発しようとすることを意味します。心理学者のジャック・ブレームが提唱しました。

たとえば「勉強しなさい」と言われた途端に勉強する意欲がなくなったり、「絶対に押すな」と言われるほど押したくなったりするのも、心理的リアクタンスが働いています。

『影響力の武器 第三版』の読みやすさ

『影響力の武器 第三版』は全492ページで、かかった時間は8時間程度です。ページ数が多いので、読書に慣れていない人だと、少し抵抗があるでしょう。

ただし、本の内容自体はそこまで難しくありません。ほかのビジネス書でも見かける有名な心理学実験や、日常例も紹介されており、読み出せば面白いと思います。

また章ごとにまとめと設問が書かれているので、心理学の理解を深められるメリットもあります。難易度的には初心者でも問題ないので、ぜひ一度読んでみてください。

『影響力の武器 第三版』がおすすめの人

影響力の武器
こんな人におすすめ
  • 心理学に興味がある人
  • 人間の行動の仕組みを学びたい人
  • ビジネスに役立つ本を探している人

『影響力の武器 第三版』は、日常生活で見られる多くの心理テクニックを紹介しているのが特徴です。心理学に興味がある人には、ぴったりの本だと思います。

また人間の行動の仕組みを学べるところも、特徴のひとつです。内容を頭に入れておけば、広告の売り文句に騙されず、相手を説得する際にも役立つでしょう。

特に営業職やマネジメント職の人は、読む価値があると思います。ビジネス書としても人気があるので、社会人であればチェックしておきたい一冊です。

『影響力の武器 第三版』の基本情報

著者ロバート・B・チャルディーニ
翻訳社会行動研究会
出版社誠信書房
ページ数492ページ
大きさ縦:19.8cm
横:13.6cm
厚さ:3.2cm
参考価格2,970円
読書時間の目安約8時間